epilogue エピローグ

「やっぱり。」
なんだかパッとしない天気にチカがポツリとつぶやいた。

今こうして純白のドレスに身を包んで、
眼下に広がる海を眺めていると、
何故私が今こうしてこんな格好をしてこんな素敵なところにいるのかさえ
全くわからないことすらもどうでもよくて、
ただ、雨女と雨男二人の結婚式がこの後始まるんだという
まるで他人事のようにこの状況を眺めているような気がしてくる。

昨日、真二のイベントが終わった後。
それからのことは、もう正直覚えていない。
私はただただ泣きはらして、
泣いた理由はいろいろあるけど、
結局最後はうれし泣きだった気がする。

でも、人生に一度きりの結婚式が今日って知ってたら、
昨日は絶対に泣かなかったのに。
こんなに眼が腫れたりしなかったのに。
真二はやっぱり詰めが甘い。

「さあ、行こうか。」

ぼーっとしてる私の横に、いつの間にやら
雨男が立っている。ニヤニヤしながら立っている。
本当に詰めの甘い男だ。

でも、今日真二と私は結婚するんだな。
なんて思うと気恥ずかしいけど、
昨日までは憎たらしかった真二のおでこを掻くクセも、
さっきからなんだか愛おしい。

控室から教会まではわずか50メートル程。
一歩一歩、こけないように慎重に歩く。
昨日までは想像もできなかったこの距離が、
どんどん縮まって、
なんて考えているうちに私たちは教会の門の前。

突然のサプライズは嬉しいけど、
一つだけ残念だなと思ってしまったのは、
やっぱり結婚式は二人きりじゃ寂しい。
大勢の人の笑顔に囲まれて、
大勢の人に祝福されて、
大勢の人に「真二は私の大切な人なの!」って、
やっぱり言いたかったかな。
まぁでも、生まれ変わってまた真二と結婚することになったら、
「サプライズもいいけど、ちゃんと皆に祝福されたい。」って
それだけは前もって伝えておこう。
なんて考えていたら、

「さ、用意はいいですか?」
という式場の方の優しい声。

聖歌隊の声に導かれるように、厳かに教会の扉がひらく。

目の前に飛び込んで来たのは綺麗な海。
目鼻立ちの整った神父さん。
キレイな歌声で迎え入れてくれる聖歌隊のみなさん。

 

それに、びっくりするくらいの「大勢」の人。

同僚もたくさん、
友人もたくさん、
もちろんメグも。
ひょこっと顔を出して
満面の笑みで手を振っている。

みんな今日のことを知ってたんだったら、
意地悪な質問ばっかりしてこないでくれたらよかったのに。

一番前の席にはお父さん、お母さん。
一体あの電話はなんだったのよ。
知ってたんならあのプレッシャーは何だったのよ。

でも、涙と笑顔で顔がぐしゃぐしゃになっているお父さんを見るのは
なんだかちょっと嬉しいようで、寂しい。

バージンロードを一歩一歩進むたびに、
また泣きそうになってくる。
もう眼が腫れるとか飛び越えて、
化粧が崩れるとか飛び越えて、
なんかもう、この涙ごと私と一緒に幸せにしてほしい。

もう、泣いたらいいのか笑ったらいいのか。
真二ってやっぱりいい男だな。

 

「私、来世の分ももう結婚しちゃったよ。」
「気が早いね。来世は来世で、もう考えてあるから。」

 

「ミスターセノオ アンド ミセスセノオ に盛大なハクシュを!」

つたない日本語の神父さんのセリフで知った事実。
私はこれからミセス妹尾。










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